モノオモイな日々 Lost in Thought

過去の覚書、現在の思い、未来への手がかり

つかず離れず

人との関係において、「つかず離れず」という距離感は心地よい。

近すぎると影響を受けすぎて時に煩わしくなるし、遠すぎるとその人に頼ることができない。ただ、そういう主観的な、ある意味で自分勝手な理由だけでなく、「つかず離れず」の関係は、二人の能力を最大限に発揮できる関係だと思うのだ。

物理の世界に称えると、それは、電荷を帯びた2つの素粒子(たとえば陽子)のようなものかもしれない。プラス同士は反発する。近づくほどその反発力は大きくなり、2つを近づけるには大きなエネルギーが必要になる。たいていの場合、2つは遠く離れてしまう。

しかし、ある距離を超えて近づくと、新たな吸引力が現れ始める(物理学では「強い力」と呼んでいる)。さらに近づくと電荷による反発力よりも、強い力による吸引力が強くなる。2つの陽子は強く結合してしまい、一体になる。この状態は安定はしているが、何かを生み出すダイナミズムがない。変化を生み出すのは、不安定性なのだ。

「つかず離れず」は、反発力と吸引力がつりあった絶妙な場所なのだ。その場所は不安定だが、逆に言えば、もっともダイナミックで、もっとも大きな可能性を秘めている。


人と人との関係においても、まず「つかず離れず」の状態に近づける努力をすることかもしれない。そうすれば、自然となにかが生まれるだろう。