モノオモイな日々 Lost in Thought

過去の覚書、現在の思い、未来への手がかり

ミドルメディアが世界を変える!?

先日、某異業種交流グループのウェブサイトにコラムの原稿を書いたのだが、気が変わって全く別なテーマで書きなおしたため、最初の原稿が不要になってしまった。最初の原稿も人に見せたくないわけではないので、このブログに記録として載せることにした。

以下が、その原稿。冒頭の挨拶を削除したので、唐突に始まるが許してほしい。また一部の固有名詞は一般名詞に書き換えた。

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【JSTサイエンスニュース】

この数年余裕がなかった理由は、いくつかのプロジェクトに時間を取られていたためです。そのひとつに、科学技術振興機構(JST)のサイエンスニュースのコンテンツ制作があります。JSTサイエンスニュースは、科学技術に関連するテーマを毎回5分の動画にまとめたオンライン・ニュース。制作は数社で分担していますが、弊社だけで昨年度30本、今年度20本、その前の試験配信期間に約50本、今までに計100本以上のサイエンスニュースを制作してきました。短いニュースですが、取材テーマのリサーチから、JST(東京)での編集会議、現地での撮影取材、編集、録音と行う一連の作業を年間20〜30回繰り返すのは、結構な時間と労力がかかりました。それでこの集まり(飲み会)には、あまり行けなかったのです!

そんな言い訳より、サイエンスニュースの取材や情報提供では、みなさんにも大変お世話になりました。この場を借りて御礼申しあげます。

 

【ミドルメディアの可能性】

サイエンスニュースの制作では色々学ぶことがありましたが、今回書きたいのは、サイエンスニュースのようなミドルメディアの持つ可能性です。ミドルメディアとは、テレビのようなマスメディアと、ブログやSNSのようなパーソナルメディアの中間にある、特定の層(数千人から数万人と言われる)に向けたメディアのことです。人々の嗜好が多様化する中、ミドルメディアは、単にマスメディアがカバーできない穴を埋める役割だけではなく、ある状況・ある人々にとってはマスメディアに取って代わるメインメディアになる可能性は十分あると思います。

 

【ミドルメディアの課題と対策】

しかし、サイエンスニュースでの経験を通じて、ミドルメディアが拡大するためには、コンテンツ制作側にもいくつ克服すべき課題もあることがわかりました。

 

1)対象とする分野の専門性を磨く

コンテンツ分野(映像、印刷、デザインなど)の専門性ではなく、例えば、医療、経済、起業支援など、コンテンツの対象分野で利用者・視聴者側の視点にたった専門性を高めることがミドルメディア制作者には必要不可欠です。出版業界では、法律専門の出版会社、医療専門の出版会社などがありますが、メディアとして歴史の浅い映像やウェブの業界は遅れています。特に特定層をターゲットにしたミドルメディアでは、専門性がなければユーザーの支持は得られないでしょう。ミドルメディアは専門性が命であり、逆に言えば、しっかりした専門性は大きな強みになります。

 

2)ミドルメディアのネットワークを作る

 規模が小さい独立系のミドルメディアは、住宅街の中にポツンとできたラーメン屋のようなもので、よほど幸運でないとお客さんは来ません。この対策として「美味しい料理を出す」ことに加えて、いくつか異なる料理屋が集まったレストラン街を作ることだと思うのです。つまり、ミドルメディアのネットワークを作ること。このメリットは、規模や露出の拡大だけではありません。例えば、サイエンスニュースが、環境・エネルギー問題、医療などのメディアとネットワークを作ることができれば、科学技術に関心ある人が社会問題の知識を広げたり、社会活動に携わっている人が先進テクノロジーの知識を得るという、単独のメディアにはできない相乗効果を得ることができます。

 

2)新しい「表現方法」を取り入れる

「メディアは模倣する」とマクルーハンが言ったとおり、現在の、インターネット上のコンテンツはまだ、新聞・書籍(テキスト情報)やテレビ・映画(映像情報)と言う旧来のメディアを模倣している段階ですが、そろそろICTを利用した新しいメディア(コンテンツ)も出始めています。インタラクティブ、リアルタイム、ユビキタス、など、新しい技術=表現が普通に使えるようになった時、ミドルメディアがどのように利用されていくのかを見据えたコンテンツ作りを、今から考えることが大切です。小回りの効くミドルメディアは、新しい表現を利用しやすい点も有利です。制作者・情報発信者は、新しいデバイスや技術のことを理解し、従来の常識にとらわれない新しいコンテンツを作る姿勢も重要だと思います。

 

【新しいミドルメディアを】

このような課題はあるものの、ミドルメディアの可能性はますます高まっていると思います。皆さんの中には、すでに特定の分野で情報発信を行なっている方々や、様々なコンテンツを作っている方々も多くいます。そのような人々が集まって、ミドルメディアのネットワークを作り、新しい表現方法を使って、新しい情報発信ステーションを作る。それは十分可能なことではないでしょうか。

 

ミドルメディアが世界を変えるかもしれない。そんな思いを共有する方々、一緒に一歩を踏み出してみませんか?