モノオモイな日々 Lost in Thought

過去の覚書、現在の思い、未来への手がかり

奪い合う社会から創造する社会へ


この本のタイトルを見た時の第一印象は「『あらゆるものを商品化する新自由主義を礼賛する印象操作本がまた出たのか』」というものだったが、読んでみるとまったく違ってた。 浅薄な先入観を反省し、著者に謝罪したい。

著者の言いたいことは最後の章である「おわりに」に集約されている。「価値は有限だと思い込み、価値を奪い合う」社会から、「価値は無限に創造できる」と信じ、「価値創造の障害となるさまざまな対立を取り除いていく」社会へと変えていくこと。 それが本来の「経営」なのだ、という著者の主張に、大いに賛同する。「なんらかの対立が起きてしまったときは『究極の目的はなにか』を問い直せばいい」という意見も、まさに最近同じことを考える機会があったところで、筆者の言わんとすることが自然に体に入ってきた(気がする)。

ただ、いきなり「おわりに」を読んでわかった気になるよりも、そこに至る15の「令和冷笑系文体(筆者の言葉)」エッセイに目を通すことをおすすめする。その方が、筆者の主張の意味・意義をより深く理解できると思う。何より、どのエッセイも本質を嫌味でオブラートしたような表現が痛快で小気味よく、思わずニヤッとしてしまう独特のユーモアがある。


たとえば、AIの急速な進展に代表される「技術か人間か」という対立も、既存の資産を奪い合う視点ではなく、新しい価値を生み出すという視点に立つことができれば、納得できる解が見つかるのではないだろうか。創造の力を信じる人々同士が、対立するのではなく、力をあわせて、あらたな価値創造を阻害しようとする人々に対して声をあげることが必要だ。この本を読んで、視界が少しクリアになつたようにおもう。