モノオモイな日々 Lost in Thought

過去の覚書、現在の思い、未来への手がかり

地に足をつけるな

"僕は学者だとか芸術家だとかいった仕事をする人は、どちらかというと浮世離れしていなければならないと思っています。片足は地面に着いているけれど、もう一方の足はどこか別の所に突っ込んでいる。それぐらいじゃないと、そもそも学者や芸術家にはなれません。" <村上春樹


「浮世離れしてる」「地に足がついていない」「変わり者」――― そんなふうに言われると、実は内心では嬉しかったりする。自分のやっていることは、人々の少し先を行ってるんだ、ということがわかるからだ。これからも、さらにけなされるよう、精進したいものだ。


それはともかく、最近は「地に足をつけすぎ」な人が多くて面白くない。もちろん、そういう人もいないと社会は混乱してしまうけど、地に足をつけた人ばかりだと、何も変化がない、つまらない世界になっていく。世の中は、どんどん重苦しくなっていく。地に足をつけよう、と自分で判断したのなら、まだいい。しかし、自分の意志ではなく、社会や組織の「重力」に縛りつけられて、地面から動けない人も多いのではないだろうか。実際の「重力」はそこまで強くないのに、自分からその「場」に貼りついているようにさえ見える。


変化を起こすのは、なにも学者や芸術家だけじゃない。「個人として生きること」の大切さに気がつき、あたらしい世界を生きる決意をした人なら誰でも、次の時代の冒険者になれる。地にべったりと着いた自分の足を、勇気を出して地面から離してみれば、思ったより高く飛べるし、早く走ることができる。地から足を離した人だけが、違う世界を見ることができる。


地面に根が生える前に、次の場所へ移動しよう。世界は広い。生きていく場所は、個人の数よりはるかに多いはずだ。


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