モノオモイな日々 Lost in Thought

過去の覚書、現在の思い、未来への手がかり

ほんとうの顧客満足を

アップルが、マスクを付けている人でもログインできるようにiPhoneの顔認証システムを改良中、という記事がSNSで流れてきた。反射的に「さすがアップル」だと思った。


新型コロナの波を受けて、毎日マスクをつけて生活していると、iPhone(正確にはiOS)の顔認証がとてもうっとおしいのだ。いちいちマスクを取るか、パスコードを入れなければiPhoneを使えないというのは、一度あの便利さを知った人間にとって、とてもイライラすることなのだ。もっとも昔、といってもほんの4,5年前までは毎回パスコードを入力していたのだから、人間の身勝手さにも呆れるが、それでも一度知った「蜜の味」はもう手放せない。

そう思っていたところに、そのユーザーの気持を見透かしたようなアップルの動きは、これぞ「顧客重視」の企業の模範だと、アップルへのロイヤルティは嫌でも高まる。



思えば、Amazonにしても、Googleにしても、今、世界を席巻している企業には、徹底した「顧客重視」の姿勢が共通しているように思う。顧客のクレームに対応するというよりも、顧客からクレームが出る前に、ちょっとした不満の芽の段階で、敏感にそれを感じ取り、さっとスマートな提案をする。顧客にとって、これほど気持ちのいいサービスはない。まったく不満がなければサービスのありがたさはわからないだろうし、不満が爆発寸前になってから対応してくれても感謝とまではいかない。「不満の芽」が顔を出したところで、さっとそれを摘み取る。そのタイミングが絶妙なのだ。

余談だが、毎年春になると、田舎の墓地に生えてくるタケノコを取りに行く。油断するとすぐ大きな竹になって、切り取るのは一苦労になる。かといって、まだ春の浅いうちに行っても、タケノコは顔をだしていない。ちょうど地面に顔をだしたくらいにいくと、足で蹴るだけでタケノコを「排除」することができる。もっとも大事なのは、いつタケノコ狩りに行くか、というタイミング。それ一点で作業の苦楽は大きく変わるのだ。アップルの対応をみて、そんなタケノコ取りのことを連想した。



ひるがえって、日本の企業を見てみると、口では「お客様は神様です」と言いながら、どうも本気でお客様に向かい合っているようには思えない。あいかわらず、自分たちだけの理屈を並べ、見えているものにも目を向けず、「そんなことは常識的に無理」「そこまでやる必要はない」と、やらない論理付をすることにばかり、頭をつかっているようにしか思えない。そこには、下手なことをやってクレームがつくくらいなら、やらないほうがまし、という、最近ますます高まっている、「積極的消極」の考えがある。

そんなことをやっているうちに、米国と日本の企業の差はどんどん広がっているように思う。米国だけではない、ドイツや他のヨーロッパの国々をはじめ、アジアでも韓国・台湾・シンガポールにも、「カスタマーサービス」ではもはや負けているのではないか。いや、グローバルな顧客満足度では、もはや中国にも負けているのではないか。



今、日本の企業、あらゆる組織にとって、過去の栄光は捨てて謙虚な気持ちで自分たちの行いを見つめ直す必要を強く感じる。今は、その最後のチャンスなのかもしれない。

「コロナ後」、そろそろ再始動をかけじめた国々の後ろ姿をみながら、なかなか再スタートを切れない日本のことがますます心配になってくる毎日。