モノオモイな日々 Lost in Thought

過去の覚書、現在の思い、未来への手がかり

「オオカミと少年」のメディア

「オオカミと少年」という童話がある。イソップ童話のひとつで、原題は「嘘つき少年」というらしい。

その内容は誰でもしっているだろう。羊飼いの少年が、ひまつぶしに、「オオカミが来た!」と嘘をつきはじめる。村人は最初とまどうが、やがて少年の言葉を信じなくなる。ある日、本当にオオカミが来た。少年は助けを求めるが、村人は誰も手を貸すことはなく、少年はオオカミに食べられてしまう。

この童話が、今のマスメディアに重なる。「庶民は深く考えない」と高をくくって、いい加減な情報、かたよった情報を流し続けていると、やがてしっぺ返しを食うだろう。ものごとをしっかり考えたいと努力している市民や、伝えられている分野の知識や経験をもった市民の中には、メディアが伝えていることはおかしいぞ、と感じる者が必ずいる。その意見を共有すれば、他の人々も嘘に気づき始めるだろう。そして、やがてメディアの言うことを信じなくなる。


今、メディアは大きな危機にあると思う。それは視聴率や購読人数の低下ではない。よりももっと深刻な危機は、メディアが伝えることを信じられなくなることだ。メディアが、私たちの社会の中で今後も役割を果たしていきたいのなら、メディアがメディアであるために絶対に手放してはいけないことを再度自覚し、それを死守するために行動することだ。そうでなければ、将来獰猛なオオカミがやってきた時、まっさきに破滅するのは自分たちだろう。