モノオモイな日々 Lost in Thought

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日本人は日本人の得意なことをやるべき~科学技術立国消滅の危機に

news.yahoo.co.jp


世界の科学技術研究が加速する中、日本の科学技術論文数(だけ)が増えていないらしい。この記事は2004年の国立大学法人化と運営交付金の削減を「主犯」としているようだが、それだけではないだろう。

もっと大きな理由は、世の中が科学者、技術者を冷遇してきたからだ。

昔から、日本の科学者、技術者は、そのアウトプットの量に比べて得られるリターンが少ない。給料も少ないし、世間の評価も低い。それどころか、科学者、技術者は「好きなことやってる変わり者」とか「おたく」とか「ネクラ」とか言われる始末。そんな風潮で、科学者・技術者になりたい若者が育つだろうか?


このことは日本にいるとわからない。

僕だって、前職の技術者時代、米国に5年間駐在する機会がなかったら、日本の科学者・技術者に対するおそろしいまでの冷遇に気づかなかっただろう。

米国の共同開発相手(ゼネラル・エレクトリックの航空エンジン部門)のカウンターパートナーの技術者と仲良くなって、ある時、給料(報酬)を聞いてみた。すると、少なくとも僕の2倍の給料をもらっていた。彼は少し年上で役職も高かったが、それを考慮しても2倍なんて差は日本では絶対につかない。社長になってやっと追い抜くくらいかもしれない(社長の給料は知らないのだが、まあだいたいそんなところだろう)。

給料の高さだけじゃない。エアロスペースのエンジニアというと、子供たちにもけっこう人気で、うちの息子はエレメンタリー・スクールで「僕のダッドは、ジェット機のエンジンを作ってるんだ!」と自慢していたらしい。(だから、会社を辞めた時は、息子に申し訳なかった。)


そんな国で、科学技術に誠心誠意取り組もうなんて、殊勝な若者がたくさん出てくるほうがおかしい。今までの日本人は、なんてすばらしいマインドを持っていたのかと驚嘆する。第2次世界大戦のあと、何とか世界に追いつこうと頑張ってきた科学者、技術者には、兵士以上に感謝しなければならない。


これはけっして愚痴じゃない。そもそも僕はもう技術者じゃない。そんな小さな個人的な気持ちで言ってるんじゃない。

これまでの日本の発展を支えてきた、日本の唯一のとりえがなくなってしまうよ、と心の底から危機感を持っているのだ。


日本は「職人の国」だ。ものを工夫し、精緻に作ることに長けている。逆に、それ以外の、高い表現力や、強いリーダーシップで相手を動かしたり、世のなかを変えたりするのは苦手なのだ。今の日本は、多くの人が苦手なことをして、「いっこうに楽にならない」と嘆いているように思う。


はやく、本来の姿にもどろう。それが日本を救う唯一の道だ。