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モノオモイな日々 Lost in Thought

過去の覚書、現在の思い、未来への手がかり

抽象的・主観的な誘導に騙されてはいけない

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ここ数年(今の政権になってから)、同じ「事実」を見ているにもかかわらず、こうも正反対の結論をだせるものなのか!?と驚嘆し続けてきました。屁理屈とか詭弁、といったレベルではなく、まったく異なる、文化、時代の人同士が通訳無しで話しているような錯覚さえしてくるほどです(錯覚じゃないのかもしれませんが)。「異種格闘技戦」でも、最低限、同じ土俵で戦うためのルールはあります(「猪木vsアリ」は例外)。

こういう状況ではそもそも議論など成立しませんので、いちいち「暖簾に腕押し」的な不毛な反論をするのはあきらめました。まったく正反対の結論があっても、それはそれでいったん受け入れて(あるいは無視して)、自分の意見を主張するのに時間を費やしたほうがまだましだと考えたのです。

しかし、中には見逃してはおけない「主張」もあります。それは、内容が偏っているものというより、一見、具体論・客観性を装っているが、実は抽象論・主観の押し付けになっているものです。論理的な意見に見せかけながら、実は人間の感情的な弱点を利用して狡猾に誘導するタイプです。こういう「意見」は、伝染性があり、他の人への影響が大きいので、許すわけには行きません。


たとえばこれです↓。

www.landerblue.co.jp



この筆者の意見を僕なりにまとめると、「美術系・芸術系の人の意見は、いつも抽象的・理想論である。このため、現安保法制反対派(そもそも「そっち方面」などという、非常に抽象的で侮蔑的な趣きのある書き方をしておられますが)になるのだ。具体的・現実的に考える人なら、現在の安保法制に賛成するはずだ」というものです。

あまりにひどい!

これは、あきらかに根拠のない誘導です。しかも、「理想的・抽象論 vs 現実的・ 具体論」という、人間のプライドに関わる感情に訴えているところが、狡猾です。

しかも、この記事を読むと、けっして美術系・芸術系の人たちだけを言っているのではなく、「現安保法正反対派は、抽象的・理想論である」という逆の命題が、それとなく伝わるような書き方をしているところが、さらに狡猾です。



百歩譲って、安保法制賛成派が「具体的で現実的」であるなら、次の質問に、具体的に回答して欲しいと思います。

・現在の安全保障上の「仮想敵国」、すなわち、日本に攻撃を加える可能性のある「敵」はどこの国・組織なのか
・どの部分を「集団的自衛権」をつかって米国に守ってもらうのか。
・どのような法整備、あるいは、同盟国との条約締結が必要なのか
・米国の合意はどこまで得られているのか
・守ってもらう条件として、日本は米国にどんな貢献をするのか
自衛隊にはどのようなリソースー装備・人員がいるのか
・そのリソースは現在の自衛隊で十分なのか。
・不足するとすれば、拡充するための費用はどれくらいいるのか。
・その費用は、どの財源からまかなうのか
・そもそも、先日おきたような、海外での一般市民へのテロ行為といった危険は、憲法改正や安保法制で防止できるのか?



まだまだ質問したいことはありますが、「具体的・現実的」とは、これらのことについて、少なくとも自分の案をもっているということでしょう。

そういうことも考えず、「憲法を書き換えて、集団的自衛権と緊急事態条項を運用すれば、国家・国民は安全になる」などと言うのは、これこそ究極の抽象論です。



そもそも、戦後70年は現在の憲法・政治システムでやってきたわけですから、現在の憲法と昨年夏以前の安保体制の方がデフォルト、すなわち「現実」です。現実にあるシステムを変えようというなら、明確な根拠が必要です。

「取り巻く環境が変わった」などという、これまた抽象的・感覚的な根拠(にはなっていませんが)で思考停止にしておいて、後は一般大衆の感情を操作して誘導、などという、某広告代理店の手法のまねはやめてください。

まずは、安保法制の前提となっている「取り巻く環境」の具体的・客観的な証拠を述べること。議論はそこがスタート点です。その前提もないのに「現実的・具体論」とは言えないでしょう(先に言っておくけど、もし「北朝鮮がミサイルを発射した」ことが取り巻く環境の変化というなら、ミサイルを止めるのに、集団的自衛権や緊急事態条項をどのように適用すればいいのかを述べてね。)


以上のようなことにいっさい触れていないこの記事が、「現安保法制賛成派のほうが現実的・具体的」と述べるのは、あまりに暴論です。

この人の記事のほうがよほど抽象論であり、この人こそ「そっち方面」と呼ばれるにふさわしいと思います。