ある駅前で、道の向こう側に渡るために歩道橋に上がった。
歩道橋のに上には誰もいなかった。見下ろす横断歩道では、何百と言う人々がひしめき合って歩いているのに、歩道橋の上の僕には誰ひとり気づかない。僕は、都会の真ん中で透明人間になった。
歩道橋の上には、美しい風景が広がっていた。大きな青空、手に届きそうなビル。川の流れのような人々。歩道橋に上がらなければ、けっして見ることができない風景。僕だけしか知らない風景。
一秒でも早く先に進もうとする人々を見下ろしながら、少し時間はかかるけど、少し遠回りだけど、たまに歩道橋に上るのも悪くないな、と思った。